モノを落とさないこと
水野さんのボッソウ報告のビデオに、幼いチンパンジーが枝をもてあそんでいる(対象操作している)場面が映っていた。チンパンジーは一本の枝を両手でもったり足で支えたり、あるいは片手で持ったり脇ではさんだりする。飽きると地面に置き、またもてあそぶ。
物をもてあそぶとき、そこには「落とさない」という遊びのルールが生じる。物を落とさずに、なおかつ物の支え方を変える。腕は物のまわりで曲げられ、まわされ、ねじられ、てのひらは開き、そしてなお物は落ちない。落とさないというルールを設定することで、腕が思いがけない動きを開発していく。
対象操作の鍵は、「落とさない」ということにあるのではないか。「落とさない」ということが四肢の動きの豊かさをもたらす。おそらく、わたしたちの腕が繰り出すジェスチャーも、「落とさない」こと、架空のできごとを重力に抗してもてあそぶことから生まれたのではないだろうか。
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